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もっとさっさとやっておくべきであった。

断片 (このサイトのどこかにあるもの)

何をやりたいか、自分が何が好きなのか、それをまず理解することが大切??スナフキン


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幻想の地誌学
空想旅行文学渉猟

書誌

author谷川 渥
publisherちくま学芸文庫
year2000
price1100+tax
isbn4-480-08581-5

目次

1感想
2抄録
348.

履歴

editor唯野
?.7.10読了
2019.2.13公開

書名の通りの本だが相当以前に読んだ本で、なぜ読んだのかも思い出せない。多分、ファンタジー物語での地誌的考察を期待して読んだのだと思われる。が、実際の内容としては文芸作品における島、円、月、地底といったものへの想像力がどのように類型化されているか、或いはそれは何のメタファーなのか――ということを言葉の原義的なことに絡めつつ取り上げた本になっている。

ちょうど直前に読書ノートとして取り上げた『ブックス・ビューティフル』における挿絵が人間の想像力をイメージとして表現していたように、こちらは人間にとっての未知の世界に対する文章での表現の裏側を類推した本という方が適切かもしれない。まあ、こういう読み解き方をすると、聖書や古事記もファンタジーになってしまうのかもしれないが...

ただ、著者の博覧強記ぶり、豊富な日本語の語彙力に驚くものの、自身が後書きでも述べているように、この本は読書ノートの延長線上という言い方も確かにその通りだと思う。類型化を扱っているものの学問的に系統だった整理がされているわけではなく、徒然なるままにというエッセイぽい印象も強いからである。

抄録

8

「地誌学(トポグラフィー)」とは、場所(トポス)について記述すること(グラフェイン)である。場所(トポス)を主題(トポス)とする文章(テクスト)だといってもいい。地理学(ジエオグラフィー)でも地質学(ジエオロジー)でも、また地図学(カルトグラフィー)でもない。密接に関連するけれども、いずれからも区別される。その「地誌学」に「幻想の」という形容辞がつく。「幻想」――それこそが問題だ。

13

すでに世界観光の時代を予感させたといっていい『ペーター・シュレミールの不思議な物語』(シャミッソー『影をなくした男』のこと:唯野注)から七十年を閲(けみ)してこのありようである。デ・ゼッサント(ユイスマンス『さかしま』の主人公)は現実の旅に早々と背を向けている。

14

-/-そこで問題になているのは、旅行家や地理学者があらゆる可能な遭遇をなしとげてしまった十九世紀という閉じた世界において古代神話のモデルを百科全書的に、つまり地の全領域にわたって拡大することだと述べている。だとすればヴェルヌの一見外交的な主人公たちとユイスマンスの一見内向的な主人公とは、少なくとも「閉じた世界」としての十九世紀を象徴する点では軌を一にすることとなるわけである。

16

そうした「幻想」をこそ主題化しなければならない。地誌学的空間を満たし、変容し、あるいはそれを創造して、そこにさまよい、あるいはそこに棲みつく、といった想像力のありようを類型論的に整理すること、それが本書の課題である。

18

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