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10月はたそがれの国
ジュウガツハタソガレノクニ

書誌

authorレイ・ブラッドベリ
editor宇野利泰(訳)
publisher創元推理文庫
year1965
price440
isbn?

目次

1感想

履歴

editor唯野
2000.4.6読了
2000.4.12公開
2002.11.28修正

レイ・ブラッドベリの処女短編集である『闇のカーニバル』を増補した本で、幻想的でありながらそれだけではない一種の怖さを感じさせる作品が並んでいる。それを強く感じさせるのは物語の終わり方の部分で、とても詩的というか読者の側に余韻を感じさせるような作りになっている。そのため、私は何よりもこの点で惹かれた感じがした。例えば、冒頭を飾る「こびと」ではこんな感じである。

エイメーはゆっくり歩きだした。が、そのうちに、足をはやめて、走り出した。ひとけのなくなった波止場を駆けぬけた。

なまあたたかい風が、空から落ちてくる大粒の雨を、彼女の上に吹きつきてきた。走りつつけるあいだ、いつまでも……

こういうシーンがどういう物語の展開の果てに出てくるかは読者のお楽しみということで伏せておくが、いずれにしても本書全体を通して個人的に最もおもしろかったのは「大鎌」という作品だった。これは麦を刈ることが人の命を奪うことになっていたという男の悲劇を描いたものだが、何気ないところにこそ悲劇の淵が潜んでいるという物語の展開の妙はさすがだなと思う。私は著者の本には長編である『火星年代記』から接したせいもあって長編作家としてのイメージが強いのであるが、各所で耳にするように実は短編にこそ著者の本領はあるように思う。

そんなわけで、とても有名な本でもある本書ではあるが、そのせいかどこかで読んだ覚えのある話もいくつかあった。先に取り上げた「こびと」だけでなく「マチス・ポーカーチップの目」「小さな殺人者」といった辺りは恐らく過去に読んだ記憶がある。いつ読んだのかの思い出せないのが悲しいところだが、裏返していえばそれだけ本書に収められている作品は完成度も高く世にも知られているということなのだろう。

また、本書の扉でも触れられているように、この本は挿絵が物語の世界と実にうまくマッチしている。ジョー・マグナイニという人の筆によるものだそうだが、この本を複数の文庫の中から探し出してきて読もうという人は、この辺も見比べた上で選んだ方がよいかもしれない。そりゃあ、挿絵ひとつで物語の入り方だって違ってくるのだから !

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