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エンデ全集8
鏡のなかの鏡
迷宮

書誌

authorミヒャエル・エンデ
editor丘沢静也(訳)
publisher岩波書店
year1997
price2,600
isbn0-092048-0

目次

1感想
2抄録

履歴

editor唯野
2000.9.13読了
2000.10.1公開
2001.4.14修正

エンデが父エドガー・エンデ(シュルレアリスム系の画家)に捧げた本。そのためというか内容はホフマンやトマス・マンといった不条理系のドイツ文学といってよい作品集となっている。しかし、私はこの手の作品が大好きなので、本書によってエンデの作品の新しい一面と同時に更なるすごさを知ったといった方が適切だ。物語そのものは全 30 編の独立した短篇から成り立っているが、それぞれは単に番号だけが付けられていて、最初の書き出しがそのまま題目になるというかたちになっている。

さて、その中でも個人的におもしろかったのは、迷宮を去る幸福の条件を描いた「2 息子は父親でもある師匠の」、途中駅を扱った「4 駅カテドラルは、灰青色の岩石からなる」、橋の建築についてを語る「12 すでに何世紀も何世紀も以前より」、電車に乗った男の顛末を追う「20 事務所がひけて、魚の眼をした男は」、子どもが聖霊から何かを学ぶ「25 手に手をとって、ふたりが道を」などだった。解説にもあるように、これらの答えのない物語を読み進めることは、文字通り「迷宮の彷徨」という言葉がぴったりくる。そう、彷徨の物語においては彷徨そのものが答えになる側面を持つからである。

抄録

22

「ほうら、すべてが証明される。カオスを征服しようとするいかなる試みも、カオスを大きくするだけのこと。最良の道は、おとなしく静かにしていて、もうなにひとつしないことでしょうな」

67-68

「そうだ」といって、老人は真剣な顔でうなずいた。「きっとあんただって気づいてられるじゃろうが、この世界は断片だけからなりたっている。そしてどの断片もほかの断片とはもう関係がなくなっている。わしらのところからあの言葉が消えてしもうてから、そうなったんじゃ。おまけに、なんとも困った話じゃが、断片はどんどんこわれつづけ、おたがいをつなぐものが、ますます少なくなっている。あらゆるものとものをもう一度結びつけるあの言葉がみつからなかったら、そのうち世界はすっかり粉々になってしまうじゃろう。 だからわしらは旅をつづけて、言葉をさがしておるんじゃ」

96

「どうすれば、おまえの言い分の正しいことがわかるんだ ?」と君は絶望して呼びかける。

「おまえ自身を出発点にして」と彼はこたえる。「なぜなら私はおまえのなかにあり、おまえは私のなかにあるからだ。真理ですら、真理どうしでささえあっていて、なにかにもとづいて立っているのではない」

181

-/-彼は、今晩のうちに公共交通監督局に厳重な抗議文を書くぞ、とひとりで大声をはりあげた。だがなにも変わらない。もはや彼自身、そんなことに効果があるとは思っていない。それを認めてしまうと、全身がぎくりとした。自分が無力だと感じた。わけのわからないものに、はだかのままさらされているのだと感じた。彼はパニックにおちいった。-/-

207

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