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光の王

書誌

authorロジャー・ゼラズニイ
editor深町眞理子(訳)
publisherハヤカワ文庫
year1985
price660
isbn15-010625-8

履歴

editor唯野
1997 ?読了
1998.5-6公開
2001.1.14修正

SF作家、ゼラズニイ 初期の代表作で、ヒューゴー賞も受賞している長編叙事詩。ヒューゴー賞/ネビュラ賞の受賞作品だからという言葉は、ある作品を読んで以来、私はあまり信用しないのだが本書はおもしろかった。光瀬龍が書き萩尾望都が漫画化した傑作「百億の昼と千億の夜」に通じるようなインドのヒンドゥー・仏教世界観と、それを下敷きにした移民惑星における植民の形態という物語の設定バランスが絶妙である。(そういえば、本書のカバー画も萩尾望都である。)

この世界の第一世代植民者たちはカースト制に基づくインド神話の神として肉体の再生を行いながら君臨する一方で、民衆の文明の発展を疎外する社会システムを構築していたが、これに反旗を翻し、この世界の文明の発展を許容してやるべきだという促進主義者たちがあらわれる。シッダルタ,如来と呼ばれるサムを中心とした彼らが一度は敗れながらも再起し、神々の叙事詩さながらの戦いを描いたのがおおざっぱなストーリーである。

物語はヤマがサムを生還させて再起を促す場面から始まり、過去の敗れた戦い(399-400)を織り交ぜながら、その後の両者による決戦へとつながっていく。

ちなみに、神々はそれぞれに相を帯びることで属性を発揮する。

主要登場人物

促進主義者側

サム 如来(タターガタ) マハサートン
   弥勒(マイトレーヤ) =光の王の意味 433-434
   釈尊 仏陀 正覚者 シッダルタ(悉達多):カピラ城太子
   大聖などなどの名前を持ち信徒がいる サムとは[平等なるもの]の意
 =カルキン将軍 束縛者の護符 雷電や電磁現象の制御
 夜叉族を滅ぼし羅刹族を地下に閉じ込めた名将
 ブラフマンとシヴァを殺す そのからくり 357-358
 ブラフマンとの妥協 447

cf.その教え61,66

ラートリー 夜の神 サムに協力して下界に落とされる

ヤマダルマ(閻魔達磨) 死神 死の凝視 発明家
 ヤマはサムとも何度かやりあっている 仲間になる経緯 373 去就 444
 ムルガー 娘

古文書保管者のタク 同じくサルの姿にされて下界にいる 輝く槍

羅刹(ラークサシャ) 悪魔 ウラートから植民のあったときにいた先住民
 実体はエネルギー体で人間の肉体に乗り移ることができる
 地獄の軍団としてサムと同盟

ターラカー 羅刹のかしら 自分が最も強いことを証明しようとする
 サムと同盟する

クベラ 肥満者 無生物との一致 ロカパーラの第四位 黒魔王バーナーを倒す
 カルキンの友人でブラフマン殺しの真相を見抜く

ヤン・オールウェッグ(オルヴァッガ) = 帆つくりのジャンナヴェッグ
 ニルリティに強力して副官となる

ストレーク
イラベクの太守
ナーラダ 医師 418

 ヘルバ 盗賊の神 サムに協力して失敗する

ニルリティ 闇と腐敗の神 黒衣の王
 ゾンビーを配下に持つ =レンフルー 死 455

ダリッサ 不知火の母の最後の生き残り 海の光の燃える力

ホウカーナ 宿屋の主人

神権政治主義者側

天井都市
 荒野,一マイル塔,カニブッラーの森林などとともに
 世界の果てにある沈黙の離宮には追憶.恐怖,傷心,屈辱,絶望の部屋などがある

三位一体(トリムルティ)
 ブラフマン 最高神 創造神
 ヴィシュヌ 維持神 迦楼羅鳥(ガルーダ =大鳥)
 シヴァ 破壊神 三又戟 いかずちの車

ブラフマンによるカースト維持の論理 109-111

護世神(ロカパーラ)
アグニ神 火神 火の鞭(杖) 赤衣の神 シヴァの死後にシヴァとなる
インドラ 雷帝 東の大陸で戦っていた 金剛杓 ヤマに倒される
(ヤマもクベラもロカパーラのひとり)

カーリー 女神 如意輪 =チャンディ =ドゥルガー 激情の女神
 ヤマの妻となりブラフマン死後にヤマと袂を分かってブラフマンとなる
 婚礼の様子 236 離別 344 453

ガネーシャ 神を作る神 促進主義者との妥協に走る

その他の女神
 ラクシュミー 美神
 サラスヴァティー 弁才天
 シャクティ
 シターラ
 パールヴァティー 楽園を追われる
 マーヤー

クリシュナ 神の酩酊 黒い神

ルドラ 無情の神 弓 アグニ神との決闘に敗れる
ムルガン
ヴァーユ 風神
クベラ神 毘沙門天

スーリア 太陽神

魔羅(マーラ) 幻術者 サムへの刺客 ヤマに倒される
 かつてサムやラートリーの逃亡を防ぐ

リルド サムへの刺客 死刑執行者
 仏陀の弟子となるが(154:善逝)ヤマに倒される

須弥山(スメール)の四天王 ヤマに倒される
 多聞天(北)
 増長天(南)
 持国天(東)
 広目天(西)

カールティケヤ 軍神
ヴァルナ 義神
ムルガン

その他

輪廻 サンサーラ
涅槃 ニルヴァーナ
化身 アヴァターラ
造物主 プラジャーパティ
仙人 リシ
神酒 ソーマ
水精 アプサラス
機会の神々(ディ・エクス・マキニ)
応現 アヴァターラ

ティータン族

業(カルマ)の司法神 =肉体商人 カースト維持の中枢
 神殿で神が転生を行うときに促進主義者かどうかを判定する
 促進主義者には新しい肉体を与えない
 司法官の代表者が大法輪

チドラグプタ ヤマの侍僕
まぼろし(マーヤー)の衣

羅針盤における論理.知識.智恵,未知の4つの方角
あらゆる生き物は死への生贄

戦いの後 465

作者は60年代に一時代を築く
神話とSFの融合という手法 文体の多様さ
サムとヤマとカーリーの三角関係が物語に大きな位置を占める

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