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万華鏡

書誌

authorレイ・ブラッドベリ
editor川本三郎(訳)
publisherサンリオSF文庫
year1978
price580
isbn78506-Y

目次

1感想

履歴

editor唯野
1999.2.2x読了
1999.3.16公開
2002.11.28修正

SFの鬼才、レイ・ブラッドベリの自選短篇集でいずれも粒揃いの作品が集まっている。基本的にはホラー路線で、ありもしないことが現実になっていくという意味での日常と非日常との境界をカギにした作品が多い。その意味では、冒頭において訳者が著者のそれを評して「彼はSF作家ではなくファンタジー作家としての言葉を用いるべきだ」というのはもっともかもしれない。

それを最も如実に物語るのは著名な「霧笛」や、静かさの中に恐怖感の残る「すると岩が叫んだ」(持っていたものを失っていく姿)「熱にうかされて」(自我ののっとり)といった辺りだろうか。むろん、他にも個人的には「国家短距離ランナー(の特に最後)」や表題作にもなっている「万華鏡」(バラバラになった宇宙飛行士たちのやりとり)がおもしろかった。私は優れた著作物とは優れた風刺の精神というか批判の精神も含むものだというふうに捉えているが、彼の作品でもその例にもれることはない。便利すぎる家に手をもてあまし、それが悲劇の発端となっていく家庭の姿を描いた「草原」やラストの「優しく雨ぞ降りしきる」(機械だけが残された町)はそのまごうことなき好例だろう。

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