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ナボコフの一ダース

書誌

authorウラジミール・ナボコフ
editor中西秀男(訳)
publisherちくま文庫
year1991
price640
isbn480-02519-7

目次

1感想
2抄録

履歴

editor唯野
2002.11.14読了
2002.11.17公開
2003.11.19修正

ナボコフというと『ロリータ』の人だが、これはその人が 1930-50 年代に書いたものを集めた短篇集。とはいえ『ロリータ』以外で何が有名なのかも含め詳しくないというのが正直なところである。それどころか、実をいうとこの本もいつ読んだのか全く記憶にない。というのは本棚を眺めていて本書を取り出してみたら、途中まで付箋が貼ってあったため、そこまでは過去に読んでいるようなのだが、どうもその覚えがないのである。よほど以前に暇つぶしで読んだものと思われ、そんなわけでここできちんと読んだのは、その残りの数篇であった。

それで、その断片的な読後感からいうと、文体的には確かに少し独特な部分を感じるものの、さらりと読めてしまった印象である。しかし、訳者は本書の翻訳に苦労した旨を正直に告白しており、訳書だと伝えにくいニュアンスの多い作家ということなのかもしれない。そのため、こんな印象で書き手を評価したのではナボコフにも訳者にも失礼であろうから、作品についてこれ以上は触れない。

代わりに略歴などを。ナボコフ(1899-1977)はペテルブルクで名門貴族の長男として生まれたが、ロシア革命によって国を追われ、英国やアメリカへ亡命。アメリカでは大学で教鞭を取る傍ら亡命作家としての創作も行い、『ロリータ』(1955)で世界的な名声を博した。ちなみに本書はタイトルに「一ダース」とあるが、実際には +1 の作品が収められており、最近の CD で見かけるシークレット・トラックのような構成になっている。

抄録

214

努力を重ねてなしとげた成果は科学となり、うまく捉えて永久に留めた成果は芸術となる。達成と科学、永久化と芸術??このふた組はいまのところたがいに離れている。だが一旦それがひとつになれば、あとはこの世の一切どうでもいいのだ。-/-

234

これまで幾度も気がついたことであるが、自分の過去にあった何か大事なことを小説中の人物のことにして書くと、 せっかくの大事な記憶が不自然な世界へ不意に放りこまれたため、だんだん痩せて衰えてしまう。心の中にはやはり残っているものの、これは自分だけのものという暖か味もなくなり、思い出しても感動しなくなり、ぼくだけの過去だったときは作家根性にかき廻されることもなくちゃんとしていたのが、だんだん過去のぼくよりも、ぼくの書く小説の方へくっついてしまう。-/-

292

この「ナボコフの一ダース」(Navokov's Dozen)には短篇が十二篇でなく十三篇あつめてある。英語では十三個を俗に「ベーカーズ・ダズン」(パン屋の一ダース)という。むかし、パン屋が目方をごまかすと処罰される法律のあったころ、それならパン一ダースあたり十三個わたしておけば文句はなかろう、とパン屋が考えた??そこから「ベーカーズ・ダズン」という言葉ができた、という説がある。言葉あそびの好きなナボコフがそれをもじったタイトルである。

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