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ナイト・フライヤー

書誌

authorスティーヴン・キング(ほか)
editor浅倉久志(ほか訳)
publisher浅倉久志(ほか訳)
year新潮文庫
price1989
isbn10-219313-8

目次

1感想

履歴

editor唯野
1998.2.8読了
1998.5 ?公開
2002.11.28修正

モダン・ホラーのアンソロジーである。アンソロジーそのものについての案内や類書の紹介は巻末の解説に詳しいので省くが、いわゆる一流どころの作家の作品群を集めた豪華な顔ぶれによる作品集となっている。収録されているのは以下の通りである。

スティーヴン・キング「ナイト・フライヤー」
ポール・ヘイズル「昼食に女性を」
デニス・エチスン「血の口づけ」
クライヴ・バーカー「魔物の棲む路」
トマス・テッシアー「餌」
M・ジョン・ハリスン「パンの大神」
デイヴィッド・マレル「オレンジは苦悩、ブルーは狂気」
ピーター・ストラウブ「レダマの木」
チャールズ・L・グラント「死者との物語」
トマス・リゴッティ「アリスの最後の冒険」
ラムジー・キャンベル「このつぎ会ったら」
ホイットリー・ストリーバー「プール」
ジャック・ケイディ「暗黒を前にして」

さて、個人的な感想である。結果的に最もおもしろく万人におすすめできるのが、デイヴィッド・マレルの「オレンジは苦悩、ブルーは狂気」である。ホラーやSFに限らず昨今ではそのジャンルの境界に明確な線引きをすることは難しいが、本作では恐怖が外からやって来るのではなく、主人公の内側から徐々に主人公を冒していくかの如く描かれている辺りが極めて秀逸である。この作品が同年のブラム・ストーカー賞の栄誉に輝いたのもうなずける完成度だった。

その他の作品では、映画制作のシーンと物語における主人公の行動とのシンクロが絶妙なデニス・エチスンの「血の口づけ」、詳細な描写と死の影を全体に感じさせるジャック・ケイディの「暗黒を前にして」、完成された構成と結末で巨匠らしさを際立たせるクライヴ・バーカーの「魔物の棲む路」などがおすすめである。

しかし、ホラーを大して読まない私が鈍感であるのかもしれないが、表題作でもあり冒頭を飾るキングの「ナイト・フライヤー」は、それほど楽しむことができなかった。真の恐怖は現実的な目の前の描写/映像ではなく未来の惨劇を受け手に予感/想像させるものだというが(このときの頭の中での映像と、それでも次のページを読ませるときの気持ちこそがホラーのホラーたるゆえんなのだから!)、この作品ではどうもそういう感じがあまりしなかったからである。

とはいえ、これは別にキングが悪いというわけではなくて、やはりある種の古典や話題作に通じる意味での、読み手の期待し過ぎたときに起こる、結果としての失望感に近いものなのかもしれない。要するに、これも有名税のうちであるということだ。キングは多作家としても有名であることは周知の事実なので、次回は代表作にも挑戦してみようと思う。

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