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盗まれた街

書誌

authorジャック・フィニイ
editor福島正実(訳)
publisherハヤカワ文庫
year1979
price480
isbn15-010333-X

履歴

editor唯野
1999.12.11読了
1999.12.13公開
2002.10.6修正

フィニィの作品はこれまでにも割と読んでいたが(『ふりだしに戻る』角川文庫など)、本書がこれまでに読んだ中で最もおもしろかった。というのも、どちらかといえば私がこれまでに接してきた作品というのは、「古き良きアメリカ」を彷彿させるタイムトラベルものが多かったため、「こういう作品もあったのか」という意味での意外性が、私にとって予想外の妙味を加えることに一役買ったと思われるからである。しかし、解説を見るとフィニイは意外と多方面に作品を書いている人であるらしく、考えてみれば本作が最も著名な作品であることを考えてみれば、単に私がこれまで偏った接し方をしてきただけといえなくもない。うまい例を思い付けないが、要は安吾を『堕落論』から入るか、『不連続殺人事件』から入るか、といったようなものだろう。げに恐ろしきは先入観という次第である :-)

そんなわけで肝心の作品の内容についてであるが、これはいわゆる侵略ものの SF である。その中でも個人的にうまいなあと思ったのは、非日常を説明しようとして裏切られていく主人公たちの描き方だった。SF などでは、しばしば主人公が自分の経験した不可思議な体験を自分以外の人間に説明しようとして苦心する場面によく接するが、この作品はその辺りの立ち回り方が非常にうまく、いつしか物語に引き込まれてしまう作りになっているのである。(種明かしはしません。あしからず。)その上、そういう展開の理由が後のストーリーの伏線にもなっているという点で、更に驚かされるのだ。そんなわけで、個人的にもこの作品はおすすめである。

主要登場人物

マイルズ・ベンネル 本編の主人公、医師
ベッキイ・ドリスコル 主人公と親しい関係にある女性
マニー・カウフマン 精神科の医師 cf.97/236
ジャック・ベリセック マイルズの友人の作家
シオドラ ジャックの妻
バッドロング 博士 cf.209/253/257
フレッド 人体骸骨 cf.245 意外と重要かも :-P

抄録

56

-/-「なぜなら、ぼくは、階下のあの男の死体が、死んではいないと思うからだ。死因のないのは当たりまえなのだ。なぜなら、死んではいないのだから。そして、死んでいないのも当然だ。なぜなら、あの男の身体は、生きていたこともないのだから」-/-

239

-/-それがかれらの存在理由(レゾン・デートル)なのです。cf.240/293

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