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大衆の反逆

書誌

authorオルテガ・イ・ガセット
editor神吉敬三(訳)
publisherちくま学芸文庫
year1995
price850
isbn4-480-08209-3

目次

1感想
2抄録

履歴

editor唯野
?.9.19読了
2017.7.10公開

大衆論の古典中の古典であり、「今更読んでみてどうなのか」と全く思わなかったのかといわれれば嘘になるが、結論からいうと十分に読み応えのある本だった。大衆と選ばれた少数者という対比は少々ステレオタイプな感じもしないわけではないが、それを強く自覚し信念となった著者にとっては、むしろそれさえもが自身の論旨を強めるために作用している。

社会学が専門分化しておらず、社会学者というよりは哲学者というべき著者の立場は、単に社会を分析するのにとどまらず、社会をこう変えなければならない、人間はこう生きなければならないという人生そのものの主張と相まって強い主張を読者に付き付けるものとなっている。解説などでも触れられているように、このようなオルテガの立場は自身の置かれた20世紀初頭のスペインの国情などにも影響を受けているということになるが、確かに古典として称されるだけの内容に富んでいる。

社会を分析するだけでなく、それを更に変えていくための主張までが織り込まれている点は、昨今の学者に最も求められるひとつなのではないかと思った。

抄録

12

この様相を分析することは容易ではないが、指摘することはきわめて簡単である。わたしは、この様相を蝟集の事実、「充満」の事実と呼んでいる。都市は人で満ち、家々は借家人で満ちている。ホテルは泊り客で、汽車は旅行者で、喫茶店はお客で、道路は歩行者で満ちている。有名な医者の待合室には患者があふれ、映画、演劇には、出し物がそれほど時代おくれのものでないかぎり、観衆がむらがり、海浜は海水浴客であふれている。以前には問題にならなかったことが、つまり、空いた場所を見つけるということが、いまや日常の問題となり始めているのである。

13

ものごとに驚き、不審を抱くことが理解への第一歩である。それは知的な人間に特有なスポーツであり、贅沢である。だからこそ、知性人に共通な態度は、驚きに瞠(みは)った目で世界を観るところにあるのである。しっかりと開かれた瞳にとっては、世の中のすべてが不思議であり、驚異である。-/-

15 cf.19/27/137

群衆は突如として姿を現わし、社会における最良の場所を占めたのである。以前には、群衆は存在していたとしても、人目にはふれなかった。群衆は社会という舞台の背景にいたのである。ところが今や舞台の前面に進み出て、主要人物になった。もはや主役はいない。いるのは合唱隊(コーロ)のみである。

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