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柔かい月

書誌

authorイタロ・カルヴィーノ
editor脇功(訳)
publisher河出文庫
year2003
price850+tax
isbn4-309-46232-4

目次

1感想
2抄録

履歴

editor唯野
2010.11.23読了
2010.12.21公開

カルヴィーノが本作で描いているのは、ある一瞬なり登場人物の置かれている状況に対する克明な描写??といっていい。奇妙な感じを受けるのは、その本来であれば一瞬で過ぎ去ってしまう瞬間を、とてもその瞬間では説明しえないような長さで説明している点にある。また、その説明が時間と空間の両方を超越している点にある。そのため極めて実験的といっていい作品集になっている。

ただ個人的には、その奇想天外さが物語としてのおもしろさにもつながっているのかと問われると若干疑問が残る。これは以前に読んだ『パロマー』にも通じる部分で、訳出の差もあるのかもしれないが、私にとってのおもしろさでいえばボルヘスなどのほうが圧倒的におもしろい。あえていうなら、カルヴィーノの場合は物語性よりも先進性のほうに重きがあるというか、そんな感じである。

抄録

24-25

これからは、この話は次々と文章をつらねた物語に頼るよりも漫画で語る方がうまくゆく。だが木の枝にとまったその鳥やそとを覗いている私や上を見上げているほかの者たちの様子を挿絵に描くには、もうずいぶん以前に忘れてしまったその当時のいろんなものの有様を思い出さなければならない。まず第一にいま私が鳥と呼んでいるもの、第二にいま私が≪私≫と呼んでいるもの。第三にその木の枝、第四に私が顔を覗かせていた場所、第五にほかの者たちなど。こうしたものの姿、形はいま私たちが普通に思い描くのとは全然ちがったものであったことだけはおぼえている。-/-

40

「さあ説明してやるぞ !」私は興奮して言った、「さあみんなにすっかり説明してやるぞ !」
「おだまり !」オルが叫んだ。「だまりなさい !」

「ちがいはないんだ ! 怪物も怪物でないものもずっとたがいに隣りあっていたのだ ! いままで存在しなかったものはずっと絶えず……」私は鳥や怪物たちにだけではなくて、方々から駆け寄ってくる以前から見知っていた者たちにむかっても話しかけていた。
「Qfwfq ! あなたとの仲はもうこれまでよ ! さあ鳥たち ! 引っ立ててお行き !」

45

-/-要するに、私もぐるなのだ、ぐるになって、塵芥の中にもひとつの秩序が、現在のシステムにもひとつの規則性が、あるいは様々の、調和はないが、ともかくある程度の規律が浸透しているふりをよそおっているのである。もっともそれはそれぞれ無秩序な粒状面にひとつの規則をもった切り子面を張りつける程度のもので、すぐにこなごなに砕けてしまうものではあるが。

62

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