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アジアの歩きかた

書誌

author鶴見良行
publisherちくま文庫
year1998
price680+tax
isbn4-480-03389-0

目次

1感想
2抄録

履歴

editor唯野
2019.9.25読了
2019.9.28公開
2019.10.9修正

著者の文章・講演・授業・書評などを集めたもので、全般的に東南アジア、もちろん著者が扱ってきたバナナ、エビ、ナマコなどにまつわる話が多いものの、その雑多な感じが逆にいかにも著者を感じさせる、そういう本になっている。フィールドワークの重要性を説き、宮本常一らに連なる存在としての「歩く学者」の堅苦しくない文章も、もちろん著者のスタイルに負うところが大きく、学者然としていないことに何の疑問も感じさせない辺りが著者の真骨頂だと思う。

ネットが普及したことでむしろアジアを含めた海外は近くなっているはずなのだが、著者のやっていたような意味では近づいたようで逆に遠くなっているのかもしれない、そんな気持ちになった。

抄録

13

――田舎を歩きまわらないと、アジアのことはわからない、と私は考えるようになっています。-/-

16-18

ミンダナオへの移住政策を推進したのは、一九三〇年代のケソン、五〇年代のマグサイサイ、七〇年代のマルコスの三大統領だった。それぞれマニラの政治判断を反映している。スペインからフィリピンを引きついだ米国には、ミンダナオを特殊視する考え方が強かった。そこは、インディアンの住む西部フロンティアと同じように、異教徒の住む特別な土地である。だからフィリピンは独立させても、ここだけは永久植民地として保持しようという各種の提案が米国本土からホワイトハウスに寄せられている。提案者は一般の市民らしく、みずから移住して一旗あげようと目論む人間ではない。それほどに、〝未開〟を同化させようというイデオロギー的願望が、当時の米国社会には強かったのである。だから米国から独立の約束をかちとったケソン大統領は、ミンダナオのフィリピン化を急がねばならなかった。フィリピン化しないと、ミンダナオだけ米国にとりあげられてしまうかもしれないのである。

マグサイサイは、CIAの後押しを受けて中部ルソンにはびこる共産党ゲリラのフク団を鎮圧した人物として知られている。-/-ゲリラの問題は、ひっきょう土地問題、農民問題である。降伏したゲリラに、マグサイサイは、ミンダナオの土地を与えた。それがこの大統領の移民政策である。

マルコスのミンダナオ政策は、かれが戒厳令後にとくに強行した外資導入による輸出志向の開発政策の一環である。ミンダナオの可耕地は、この時期に急速に増えるが、そこに植えられたのは、多くの場合、バナナ、パイナップル、サトウキビ、パームヤシなど輸出作物だった。

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