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武器としてのスキャンダル

書誌

author岡留安則
publisherちくま文庫
year2004
price740+tax
isbn4-480-03942-2

目次

1感想
2抄録

履歴

editor唯野
?読了
2015.11.10公開
2015.11.15修正

いうまでもなく『噂の真相』の編集長として活躍した著者がその遍歴を綴った本で、自身のスキャンダリズムとの関わり合いを含めて十分な読み応えがある。特に同誌の歴史においては欠くことのできない1980年の皇室ポルノ報道をめぐる顛末なども収録されており非常に興味深い。しかし、その根底を貫くのは、やはり下記のようなタブーが腐敗を生むという筆者の強い信念であると思う。

ジャーナリズムの批判を遮断し、タブーの領域をつくることによって成立する組織や人間は必ずや腐敗し、独善に陥っていくことは、歴史的にも明白である。-/- (p64-65)

これは週刊金曜日が創刊時に掲げたJ.E.アクトンの「権力は腐敗する。絶対的権力は絶対的に腐敗する」という言葉に通じるものがある。高尚な理念を掲げた共産主義国家が失敗したのは何であったか、世の独裁国家が失敗したのは何であったか、歴史を紐解くまでもなく自明のことであるが、権力の独善が必然的に利権の専横、即ち癒着という腐敗を生み、それが常態化した必然であろう。官邸がマスコミの報道に注文をつけるなどという事態が実際に通ってしまう昨今の日本もどんなものかと思うが、これも根は同じことである。

私はネットの普及こそが(特に2ch的な匿名スキャンダリズムの登場が)『噂の真相』を休刊とさせた大きな要因ではないかと考えているが、その種のネットでの突発的な「祭り」も今では下火である。これは読み手のことなんか考えなくて自分さえおもしろければいいというような粗野な突出がなくなって、「炎上」はあってもWebでの書き手自身が読み手のことを意識してしまって無難になっているようなイメージである。というよりも過激な発言をしたところで、そのプラットフォーム自体がSNSなりのお膳立てされた場である以上、バカッターのようなものも含めて意図的であろうとなかろうと運営側から見て都合が悪ければ勝手に削除されてしまうのが現在のネットの実情だからである。

Webの成熟というのは、こういうことではないと私は思うし、この種の先摘みは逆に余裕のなさを生むだけだと思うのだが、やはりそこで鍵を握るのは著者が掲げるような健全なスキャンダリズムなのではないだろうか。

抄録

11

ここで竹中労の思い出の一端をわざわざ語ったのには、それなりの理由がある。『左右を斬る』『スターを斬る』『エラい人を斬る』といった、竹中氏の初期の??斬るシリーズ?≠アそ「噂の真相」スキャンダリズムの手法のお手本であり、学ぶべきものの多い教科書でもあったのである。筆者が創刊編集長を手掛けた「マスコミ評論」、そしてその後二十五年間にわたって編集発行人をつとめた「噂の真相」の文面体において何よりも意識したのは竹中氏の軽妙なアジテーション文体の手法をいかに自分なりに取り入れるか、ということであった。

13

しかし、それ以外に選択の余地は無かった。筆者自身の給料を抑えるなど経営コスト削減を図りつつ、話題になるような面白い記事を作っていくしかなかった。「やるっきゃない」という状況に追い込まれたことが、結果的には部数増への途に繋がった。検察や警察といった権力機構から芸能・スポーツ界まで、マスコミタブーに次々とチャレンジしていかざるを得なかったからである。以前だったら、手っ取り早く広告を取ってくるという方法が残されていたので、紙面づくりへの全力投球にもいくばくかの「甘えの構造」があったわけだが、広告収入の可能性が閉ざされてしまった以上、スクープを狙ってひたすら突っ走るしか術はなかったのである。

17

噂はひと言つぶやくという最小限の努力で、大きな効果をもたらすという力を秘めている。-/-

一方、噂に対して抵抗力の強いタイプと、それにすぐに傷つけられ、ペースを乱されてしまうタイプの人間がいる。-/-

21

結論をいえば、企業社会における出世願望を満たすことは「悪人指向」とオーバーラップするということである。-/-

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