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古本街の殺人

書誌

author紀田順一郎
publisher創元推理文庫
year1994
price540+tax
isbn488-40603-3

目次

1感想
2抄録

履歴

editor唯野
2001.11.13読了
2001.11.18公開
2001.11.22修正

紀田順一郎によるビブリオ・ミステリの一冊。私は以前に同じ著者の『古本屋探偵の事件簿』を読んだことがあるものの、既に別の本が文庫化されているとは露知らず、たまたま新刊屋で見つけて本書と 『古書収集十番勝負』 とをまとめ買いしたものである。私は『古本屋探偵の事件簿』と同じ頃、ちょうど話題を集めていたジョン・ダニングの『死の蔵書』を読み、前者の方が圧倒的におもしろかった記憶がある。やはりこの世界での碩学といってよい著者ならではの古書の薀蓄とビブリオ・マニアの生態を余すところなく描いたという点で軍配は前者に上げざるをえなかったからである。

翻って本書も愛書家グループに容疑のかけられた殺人事件を扱ったもので、『古本屋探偵の事件簿』のようなマニア個人の偏執色こそ前面ではないものの、各メンバーも癖のある人物ばかりであり、それはそれで妙味を出している。(第一、書名からしてポーの「モルグ街」を意識しているのは明白である。)個人的にはお定りの名探偵が登場するわけでもなく、あくまで古書の世界を中心にして物語の展開していく辺りが、類書との差別化という意味でも効果的で一気に読ませてもらった。殺人の種明かしが突飛というわけでもないが、最後にほつれた糸がほどかれていく様などはちゃんとしていて「あれも伏線のひとつだったのか」という楽しみも多い。ビブリオ・ミステリというジャンルをご存知でない方であれば、一読を勧めるに足る作品だと思う。

抄録

135

「??考えてみりゃ、普段からおれたちは互いに本好きということ以外、プライベートなことはあまり打ち明けないし、知ろうともしないからなあ」宮川は思いにふけるような口ぶりになった。「別に私生活を隠そうとするんじゃないが、お節介やべったりした関係を嫌うんだな。これが世間一般の、たとえば会社のようなところだと、どこに住んでるの、家賃はいくらだの、なぜ結婚しないの、子供はどこの学校行ってるの……と、もう煩(うるさ)くって敵わないほどだからね。その癖、だれも他人のことなんて親身に考えてはいないんだ。本好きっていうのは、そういうのがいやでたまらないんだ。それに、自分の独特な世界に徹底的にのめりこんで、陶酔してる人種だからね。正直なところ、この世界以外のものはまったく平板で、退屈で、関わる必要などこれぽっちもないというのが本音さ。生臭い世界が大嫌いなんだ。-/-」

159-160

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