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ふるさと

書誌

author島崎藤村
publisherほるぷ出版
year1974
price?
isbn?

目次

1感想
2抄録

履歴

editor唯野
2002.8.14読了
2001.8.20公開
2002.8.20修正

藤村が自身の子供向けに書いた『幼きものに』の姉妹編となる本。私が読んだのは大正 9 年に実業之日本社が復刻したものを、更に昭和 49 年にほるぷ出版が名著復刻した版である。中身は主に藤村が幼少時代を過ごした信州木曽での逸話、風土の解説となっている。(ちなみに藤村の有名な「血につながるふるさと、心につながるふるさと、言葉につながるふるさと」という言葉は本書ではない。)

今から見ると十四・五歳向けの本にしては(一応ふりがなはあるものの)何とも漢字の多い本である。また、生活習慣の違いなどもあって、そのまま今日の子供に勧められる内容ともいえないが、藤村の筆遣いはとても自然な感じで滋味にあふれている感じが強く、本を読んでいて落ち着いた気分になれたというか、これはこれでなかなかよかった。

抄録

4

人はいくつに成っても子供の時分に食べた物の味を忘れないやうに、自分の生まれた土地のことを忘れないものでね。縦令(たとへ)その土地が、どんな山の中でありましても、そこで今度、父さんは自分の幼少(ちひさ)い時分のことや、その子供の時分に遊び廻った山や林のお話を一冊の小さな本こ作らうと思ひ立ちました。-/-

44

山や林は父さんの故郷(ふるさと、郷は旧字:唯野注)です。父さんのやうに大きくなつても、忘れずに居るのは、その故郷です。-/-

49

父さんの幼少な時分には、お錢(あし)といふものを持たせられませんでしたから、それが癖になつて、お錢は子供の持つものでないと思つて居ましたし、巾着からお錢を出して自分の好きなものを買ふことも知りませんでした。お家(うち)からお錢を貰って行つて何か買ふのは、村の祭禮(おまつり)の時ぐらゐのものでした。

69

父さんのお家ではこのお茶ばかりでなく食べる物も着る物も自分のところで造りました。お味噌(噌は旧字:唯野注)も家で造り、お醤油も家で造り、祖母(おばあ)さんや伯母さんの髪につける油まで庭の椿の樹の實を絞つて造りました。-/-

77

山の中に育つた父さんは、いろいろな木をお友達のやうに思つて大きくなつたばかりではありません。お前達の好きなお伽話の本や雑誌の中に出て來るやうな、鳥や獣まで幼少い時分の父さんにはお友達でした。

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