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風の男 白洲次郎

書誌

author青柳恵介
publisher新潮文庫
year1997
price400+tax
isbn4-10-122721-7

目次

1感想
2抄録

履歴

editor唯野
2017.8.14読了
2017.12.18公開

白洲次郎の没後に故人を偲んで編まれた本で、当時に存命だった関係者から得た逸話を集めた内容になっている。逸話を集めただけでも本人の首尾一貫性というか、そういうものが滲み出ており、それがプリンシプルということなのかもしれないが、何よりも自分に正直な人だったということなのだろう。こういう人の評伝は周りがとやかくいうよりも実際に読んでみたほうが早いので、関心を持たれた方であれば、四の五をいわずさっさと読むことをお勧めするし、この人自身も、恐らく同様のことをいうのではなかろうか。

また、東北電力会長から身を引いた後は軽井沢ゴルフ倶楽部の運営に徹して表には出て来ないなど身の引き際がうまいと思う。昨今の政治家などと比較して特にそう感じる。

# 単純に評伝としてであれば『プリンシプルのない日本』なり、間接的にはなるが妻の正子さんの本を読むべきだろう。
# ちなみに、彼が住んでいた鶴川の家は武相荘として公開されている。一度訪れてみたいものである。

抄録

11

(辰巳栄一は:唯野注)昭和八年一月に英国駐在から、関東軍参謀に転じ、関東軍司令官、駐満全権大使、関東長官を兼ねた武藤信義大将(やがて元帥となる)の秘書官となり、満州事変の処理にあたることになる。しかし、武藤元帥は突然発病し、急逝。大黒柱を失った陸軍は皇道派と統制派との対立が決定的なものになり、二・二六事件という破局を迎えたのである。

辰巳は、武藤元帥が生きていられたら、と思うことがしばしばあった。かつて一部の有力政治家の間に、次の総理大臣に武藤元帥を迎えようという動きがあった。それとなく元帥の意向を伺ってくれと、陸軍次官から辰巳の許に私信がとどいた。ある日の夕食の折に辰巳がこの話をもち出すと、武藤は即座に「私は生涯武人として生きる。政治家になる柄でもなく、また政治は大嫌いだ」と応え、辰巳は襟を正す思いを味わったことがあった。武人の矜持というのだろうか。その時、めったに人の悪口を言わぬ武藤が珍しく、宇垣一成大将のことを強く非難したことも辰巳は忘れなかった。-/-

14-15

(辰巳が:唯野注)着任してすぐにとりかからねばならぬことは、言うまでもなく「日独防共協定」の締結を吉田に説得することだ。しかし、予想した以上に吉田茂の信念は強かった。辰巳は、この協定はあくまでもイデオロギーの問題であって、政治的さらには軍事的なものではないと説明するが、吉田は頑としてそれを聞かない。

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