ホーム > 読んだ >

高橋和巳エッセイ集
現代の青春

書誌

author高橋和巳
publisher旺文社文庫
year1973
price320
isbn1-064019-7

目次

1感想
2抄録

履歴

editor唯野
2000.2-3読了
2000.4.23公開
2002.4.9修正

高橋和巳の文章を集めたアンソロジー的な本。しかしながら、とても読み応えのある一冊だった。全体として文章も平明で分かりやすい。戦後の日本が早くして失った才能のひとつとして著者を挙げることに、何ら異論を感じさせないだけのことが書かれていると思う。まさしく時間をかけて消化していきたいといえる内容だった。

本書には、「一人の思想家の思想の長寿は、その思想家の偉大さを意味すると同時に、彼がなげかけた問題を、なお解決していない後世の怠慢をも黙示する。」(p.92)という箇所があるが、それは時代や社会にとっての怠慢だけでなく、個人にとっての怠慢ともいいえるだろう。だとすれば、個人としても、こういった書物から受けた啓示を少しずつでもよいから自分なりに消化していくのだということ。その総体が時代にとっての怠慢の回避となりえるような行い(そういう方法の効果や意味は別として)の継続をやっていけるようにしたいものだと思う。

抄録

8

国家の政治の区分よりも、その人々の不断の努力と抗争の方が大切なのです。ただ、私がかつて、《世代論》めいたことを提言したことがあるのは、ことが教育の問題に関係しているからです。人間を文化的動物として築きあげるのは教育です。人間全体の運命にとって、政治家や法律家など、人間を外面から規制しようとする人々よりも、人間の内面を陶治する教育者の果たす役割の方が、地味ではあるけれども実ははるかに大きいものと私は考えます。いかなる思想もまず誰かに伝授され、自律的年齢に達して、それを自己自身の状況に照らして考えを深め、さらに生活全体の上澄みのようなものとしてみずから独自の思念を、学んだものの上につけ加えたものでしょう。これ以外のいかなる啓示も頓悟も思想的進展もありえません。

9

思念の習得過程で、社会の価値観に極端な転換がおこるということは決して好ましいことではありません。何故なら人間というものは、個人を超えるある価値を一たん疑いますと、他の価値に対する奉仕の精神をも同時に失ってしまうものだからです。

敗戦後、二種類の青年があらわれました。国家への奉仕を、たとえば階級への奉仕へと切り換えて、価値観はとりかえたが、態度そのものは変えることなく突走った人々。もう一つは、何をするのも嫌になり、すべてのことを疑ってかかり、そして消極的ニヒリズムを克服せねばたった一歩すら前に踏み出すことができなくなった人々。-/-

10

盲目的に信ずることと、すべてが相対化されて何をするのも阿呆くさいこととの、わずかの間隙に、挫折を繰返し、悩み、絶望しながらも、みずからによって価値を築いてゆく、背理的な空間があるわけなのです。-/-

12

全文を読まれる場合はログインしてください


Up