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李欧

書誌

author高村薫
publisher講談社文庫
year1999
price714+tax
isbn6-263011-7

履歴

editor唯野
2000.7.1読了
2000.7.3公開
2001.1.21修正

『わが手に拳銃を』を元に書き直された作品。主人公が最も自分と年齢的にも近かったせいか、そういう意味での感情移入はしやすかったように思う。ひとことでいってしまえば、主人公と李欧という男との友情を描いた本で、それに著者の作品での共通項といってよいスパイ・大阪・教会といったキーワードの入った作品になっている。また、全体的に幻想的というか徹底したリアリティとは少し距離の置かれている点でも他の作品とは一線を画しているといえるかもしれない。まあ、何にせよおもしろかったので、私にとってはそれでもう十分でしたが。

# これで現時点での文庫化作品は読み終えてしまいました。
# 読み終えてしまうと、それはそれで安堵感がありますが、
# 一方でもったいない気がするのも事実です。

主要登場人物

吉田一彰
 主人公。cf. 144-145, 270, 350, 500

守山耕三
 姫里にある町工場の工場主。主人公は少年時代をここで過ごす。
 cf. 133, 225, 227, 271

咲子
 守山の娘。cf. 487, 489<!--後に主人公と結婚。送られてきた爆薬で死ぬ。-->

田丸
 府警の刑事。田んぼのおまる。cf. 186, 341, 505

趙文礼
 陳浩。主人公の母が駆け落ちした中国人。<!--中国に浸透した西側のスパイで李欧に殺される-->

李欧
 鈴木。晏磊。后光寿。主人公と時間を越えた友人。<!--宏亮幇(CIA)と対立している-->
 cf. 176-177, 242, 403, 426-428, 435, 510, 518

笹倉文治
 裏社会の人間。cf. 219, 266, 421, 433, 435, 520<!--後に李欧のパートナーになり李欧のために死ぬ-->

原口達郎
 関西の暴力団組長。拳銃を通じて主人公とつながりがある cf. 303<!--咲子と同じ理由で殺される-->

抄録

446

市場で動かしているのは所詮、数字です。稼いだ金を最終的に何に使うかで、その人間の真価が決まります。-/- (cf. 436:唯野注)

507/509

-/-人が人でない、政治や歴史の全部を憎悪したのだが、その結果個々の死はいくらか茫洋とし、一つ一つ時代に呑み込まれていこうとしているのは、果たして必然だったのか、それで死者は救われるのかと、今はふと考えた。

-/-戦争が終わっても、植民地が独立しても、民主主義だの共産主義だのというて、どれだけの人間が希望の前売り券を自分の命で買うてきたか、ということや。それでもその日は来ない。いつまで待っても、希望のカラ売りや。そういう時代やった。

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