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マークスの山 (全2冊)

書誌

author高村薫
publisher講談社文庫
year2003
price各\648+tax
isbn6-273491-5(上巻)

履歴

editor唯野
2003.2.22読了
2003.12.1公開
2003.12.16修正

「俺は今日から《マークス》だ ! マークス ! いい名前だろう !」(上巻 p.116、cf.182)

警察小説と山岳小説とを合わせたような作品。この手のミステリとして警察ものが一大ジャンルたりえているのは私も知っているが、考えてみると明らかにそう銘打たれた日本の作品を読んだのはこれが初めてという気がする。とはいえ、それ以前に著者の直木賞受賞作として余計な説明も不要だろう。

本作の名前ともなりキーワードでもある「マークス」。それは複数の登場人物たちに関係する言葉なのだが、それだけで物語が成り立っているわけではない。単純な犯人探し以外の、主人公が身を置く警察という組織ゆえの葛藤、圧力、人のつながりが捜査の進展に絡めて重厚に展開されている。

しかしながら、それにも増して本作を彩っているのは水沢という強烈な犯人像だろう。なぜなら、本作は水沢の過去を含めた一生に沿って進む一種の必然の物語ともいえるからだ。確かにそこにはこの小説にとっての都合のよい部分、理屈でない釈然としない点もないわけではない。しかし、極めて今風というのもおかしいが、彼の常人を逸した行動こそが、実はこの物語で最も首尾一貫したものになっている。だからこそ、この作品のラストは確かにこれ以外はないという納得と印象を読み手に与えている。

個人的には本作は高村薫を知ったときに既刊の文庫を全て読んでしまってからというもの、久しく待っていた次なる文庫化作品であった。文庫化にあたり内容を全面的に改稿しているのは本作でも同様である。しばらく時間を置いたせいか、以前ほど入れ込んで読んだというわけではなかったのだが、一気に読ませる辺りはさすがだと思う。そういう意味では非常に外れのない人である。

主要登場人物

合田雄一郎 主人公、捜査一課の警部、過去に別件で水沢を取り調べている、
 cf.上281-282/下161
水沢裕之 マークス、古いスニーカーを履く
 cf.下46/下75-76/109/155/166-167/191-192/347<!--犯人-->
岩田幸平 南アルプスの殺人事件の犯人、cf.上95
高木真知子 看護婦、水沢の過去を知っており同居する cf.上126/下194
野村久志 南アルプスで殺された左翼関係者 cf.上100/下180
山本夫婦 豆腐屋を営んでいる、水沢のかつての保護者、cf.上120/下223<!--水沢に殺される-->
畠山宏 元組員、謎の凶器で殺される、cf.上136/164/168/175/217/298/332<!--凶器はアイスハーケン(cf.下31)-->
西野富美子 畠山の女 cf.上155/163
加納祐介 地検で働く合田の元義弟(双子の妹の貴代子が合田の元妻)、cf.215/219/253
松井浩司 法務省刑事局次長検事、畠山の次の被害者、cf.上194/207<!--《M》-->
林原雄三 弁護士。過去に畠山の弁護を引き受けたことがある、
 cf.上262/267/324/下243<!--《R》-->
木原郁夫 暁成大学理事長、蛍雪山岳会名誉顧問、cf.下15/29-30/53<!--《K》-->
佐伯正一 佐伯建設社長、検察の内偵を受けている、cf.下16/111<!--《S》、自殺する-->
浅野剛 故浅野病院病院長、平成元年に水沢が盗みを行っている
 cf.下85/87/95/237<!--《A》-->

抄録

上 26/34/65/72

南アルプスで起こったいくつかの殺人事件のおかしな点について。下230-232 でも整理されている。詳細は下163(水沢一家心中その他)。

上 108-109

……そもそも、約三年周期で、明るい山と暗い山が交代するのだ。理由など知らないが、あるときふと、物心ついたころからずっとそうだったと気付いた。これが自分に定められた不変のリズムだというなら、自分の人生は結果的に、使いものになる年数が人より三の整数倍だけ短いことになる。暗い山にのっかっている三年間は、死にかけの魚よりひどいザマだからだ。cf.128

「マークス」について。cf.上61/114/116/131/178/222/334、下42/198/199/202。マークスに連なる人物たちは、いずれも暁成大 46 年卒、蛍雪山岳会 OB という接点がある。cf.下61/91-92

上 137/146-148

合田の仲間として登場する警部たち。主に以下の面々。

肥後和己 巡査部長
有沢三郎 巡査部長、《又三郎》
森義孝 巡査部長、《お蘭》
広田義則 巡査部長、《雪之丞》
松岡譲 巡査、《十姉妹》
吾妻哲郎 警部補 《ペコ》
林省三 係長

上 241

「これで《M》が消えてしまったよ。《A》は何年か前に死んでる。この間の吉祥天女は余計だったから、残るは《R》と《K》と《S》だ。三人で福沢諭吉の相談はしたか ? いつ渡せるのか、そろそろ決めてもらわないと、マークスがまた機嫌を損ねてしまいそうだ。今はご機嫌だけどな。聞こえてるかい、先生」cf.上242/243

上 261

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