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日本を滅ぼす<世間の良識

書誌

author森巣博
publisher講談社現代新書
year2011
price720x
isbn978-4-06-288126-5

目次

1感想
2抄録

履歴

editor唯野
2018.7.12読了
2018.9.4公開

著者の最も毒舌の効いた一冊で、特に借金まみれでとっくに破綻している日本の財政状況であるとか、東日本大震災と福島第一原発事故に対する指摘などは、かなりの猛毒といっていい内容だと思う。言いたいことを言い尽くしてしまったのか、それとも本書を上梓してなお状況の悪くなる日本に愛想を尽かしたのか定かではないが、現時点でもこれが森巣氏の最新の本となっている。

本書はそれまでのギャンブル小説のような形態ではなく、時事エッセイというかたちで直接的に社会的な話題を扱っている点で、これまでの本とは異なる。大手マスメディアや評論家が官邸から接待を受けていた件では、それが華麗に大手マスメディアでは黙殺されている辺りなど、それを見れば森友事件などで大した追及をしない(できない)現況も筋が通るというものである。

願わくば著者も官邸から大金をもらったことで黙ってしまったとは思いたくないので、ぜひとも続編といえるような本を出して欲しいものだと思う。

抄録

3

わたしはこれまで繰り返し、

「無知というのは知識がないことではない。疑問を発せられない状態を指す」

とするフランツ・ファノンの言葉を引用してきた。

日本の大手メディアが、問いを発する能力を備えていたら、本質に迫る質問ができていたら、すなわち「無知」でなかったら、と夢想するのは、「ないものねだり」なのだろうか。

4 cf.17

基本的に「社会」は論理で成立すると考える。ところが多くの場合、「世間」は情動によって形成される。そしてその情動は、大手メディアの誘導によってできあがる場合がほとんどだ。

5 cf.16

――利潤の私益化、費用の社会化。

これこそ新自由主義思想のキモだ、とわたしは考えた。

それまで「社会資本」として国民の共有財産だったものが、「民営化」の掛け声で一部の人たちのみの私有とされる。鉄道にせよ電話回線にせよ、あれ、元はといえば税金でつくられたものなんですが。

電力についても、ほとんど同じ論理が適用される。

電力の生産・頒布は独占となるよう、わざわざ法律(『電気事業法』)で定められた。電力会社は私企業にもかかわらず、「公益」法人としての特権を与えられている。日本を、そして世界を放射能まみれにしておいて、どこが「公益」なんだか、わたしにはよくわからないけれど。

12-13

したがって、もしそれが「政権交代」の呼び声が高い総選挙を間近に控えた極めて政治的な時期に、野党党首というきわめて政治的な人物およびその公設秘書が、政治資金規正法違反というきわめて政治的な犯罪で狙われたら、それはきわめて政治的な捜査である、とひとまずわたしは考える。

これは狙われた小沢一郎民主党党首(当時)が清廉潔白であることを、ちっとも意味しない。

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