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日本のアウトサイダー

書誌

author河上徹太郎
publisher新潮文庫
year1965
price220
isbn0195-121301-3162

目次

1感想
2抄録

履歴

editor唯野
?.07.09読了
2011.02.13公開

近代日本のアウトサイダーを取り上げることで逆にそのインサイダーを照射しようとした本。しかしながら本書の最後で著者がいみじくも語るように「つまり、アウトサイダーというのは何れはインサイダーということの対立概念であるが、近代日本にはインサイダーがないことを示すものなのである。従って同時に私は、この探究によってインサイダーの姿を逆に照らしだそうと企図したのだが、それも果たせなかったのであった。(p206)」という結論部分に至る本となっている。

論旨は明確で上記の結論もなるほどとは思うが、個人的には近代日本におけるキリスト教の意義などのほうが興味深かった。文学的には自然主義との絡みが全般的に語られているが、私自身、あまり自然主義には関心が薄いせいかもしれない。

抄録

9

これはちょっと、わが最近の素人作家の登場と事情が似ている。今日のわが文壇で素人だということは、もはやナイーヴだということではない。むしろ反対に、素人だから恐いもの知らずで、文学的な約束を無視し、読者の読み方となれ合って、手っ取り早い状況設定に成功した小説が書けるのだ。つまり彼等は、決して新鮮さが買われているのではなく、一種単刀直入な型破り、それに必要な語感の鈍感さ、それに伴う悪達者さが取り柄になって来る。それは素朴とか無邪気とかいうのと反対に、文学以外の観念連合をうまく取り入れることの巧みさといった、後天的な才能が眼について来るのである。

11 cf.12

ところでアウトサイダーという概念は、一つの時代を支配する実証主義なり観念論なりの体系に対して、偶像破壊的な作用をする時に一番本領を発揮するものだといえよう。そうするとこれはいつの世にもあるものであり、また哲学とか文学とかいうものは、本質的に世の通念を匡すという性格を持っているから、文芸の徒は何等かの点で多少ともアウトサイダーである。-/-

17

この呼気と吸気という言葉の着想は面白く、明瞭である。しかし中原(中也:唯野注)の論理はいつもそれから発展してゆくものがなく、最初のイメージを限定しようとして、何か弁解がましい啖呵に終るのが常である。そしてこれは彼の詩の作法にも通じる手法である。-/-

20

恐らくここに書かれた分析は、御当人たちは意識していないことが多いだろう。然し彼等はそれでいいのだ。人生は三年生きても三十年生きても、途中幾つの思想を征服したかよりも、ただその間の時間の密度が問題なのである。

26

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