ホーム > 読んだ >

連合艦隊興亡記 (全2冊)

書誌

author千早正隆
publisher中公文庫
year1996 (上巻)
price820 (上巻)
isbn4-12-202585-0

履歴

editor唯野
2007.03.17読了
2014.04.12公開

元海軍参謀という関係者による太平洋戦争を海軍から見た通史。日本海軍 = 連合艦隊という観点に立って、日清・日露戦争を含む主な海戦とその経過を取り上げている。概略としては、日本は真珠湾攻撃において航空母艦を中心とした画期的な運用を行なったものの、それは真珠湾攻撃という奇襲のために編み出されたものであった。そのため内部に根強い艦隊決戦・大艦巨砲主義の考え方ではその意義を十分に認知した対応を取ることができず、ミッドウェー以降は物量に勝る敵の前になす術がなくなってゆき、最後は体当たり攻撃に頼るばかりとなってしまった流れを述べている。

関係者による文であるため図表も豊富で臨場感を感じさせる反面、やはり日本びいきというか若干客観性に欠ける文面も見られるが、全体としてはよくまとまっていると感じた。しかしながら、著者も最後で触れているように、生産力に圧倒的な格差のあったアメリカとの戦争を開始したこと、それ自体が戦略的にいって誤りであったと私も思う。この視点に立つ限り、個々の海戦も戦術論とならざるを得ず、戦局の転換点となったミッドウェー、ガダルカナル島をめぐる戦いにおいて仮に日本側が善戦をしたとしても、長期的にみて日本がジリ貧に陥るのは避けようがなかったように思われる。

その意味では、やはり開戦の決定からポツダム宣言受諾に至る間の当時の首脳部の意識も合わせて読み解かないと、太平洋戦争(または大東亜戦争)の理解という点では片手落ちかもしれないと思った。殊にアメリカとの戦争を避けるのが根本方針であった海軍首脳部の変化は本書において、もっと掘り下げられてもよかったのではないかと感じた。

# 艦コレな人とかが読むと、もっとおもしろいのかもしれません...

抄録(上巻)

8-13 cf.65

-/-その行動(真珠湾攻撃を指す:唯野注)は敵側にとって全くの覆面行動であったが、その作戦目的、計画は日本海軍部内でも秘密のベールにつつまれていた。それを知っているのは特別の関係者に限定され、開戦前に発布された連合艦隊作戦第一号(軍機)でも、この真珠湾奇襲部隊のところは、空白にされていたほどであった。まったくの覆面部隊だったのである。

それまで航空母艦兵力だけで一つの単独の作戦を実施する思想は、世界のどこの海軍にもなかった。いわんや、一国の持つ全航空母艦兵力を集中して使うなどという思想は、考えもおよばないことであった。いまやハワイの北々西の海上から航空攻撃の矢を射ようとしていたこの奇襲部隊は、はからずも、世界の海軍でその比をいまだ見たことのない海上兵力の大集団であった。

そして、世界の海軍で考えたこともない海上の新しい戦力が爆発したとき、いかなる結果をもたらしたか、そしてそれが彼我の作戦にいかなる影響をおよぼしたか、さらに個々の航空母艦がいかなる運命をたどったかということほど、太平洋戦争における日本海軍のたどった運命をもっとも端的に象徴したものはなかった。

この奇襲部隊こそは海戦に革命をもたらすことになる航空母艦を中心とした部隊であったが、この時点ではあくまでも真珠湾攻撃のためだけに計画されたものだった。そして、その作戦を立案したのは連合艦隊司令長官山本五十六であり、昭和15年頃から着想を行ない、翌年、及川海軍大臣に提示された。

21--31

全文を読まれる場合はログインしてください


Up