ホーム > 読んだ >

真田騒動
恩田木工

書誌

author池波正太郎
publisher新潮文庫
year1984
price514+tax
isbn10-115621-2

目次

1感想
2抄録

履歴

editor唯野
2002.9.6 ?読了
2002.9.17公開
2002.10.1修正

池波正太郎の代表的長編というと剣客商売なり鬼平犯科帖なりが有名だが、忘れてならないのは『真田太平記』であろう。というより、私はまだ前掲のシリーズをきちんと読んだことがなく、長編で接しているのは『真田太平記』ばかりである。というのも、剣術ものや捕物帖は他にも傑作は多いと思うが(ファンの方には無粋なことをいっています :-))、いわゆる *真田もの* となると、これは明らかに著者の独壇場だと思われるからである。

かくいう本書も、そういう一冊で、信州松代藩の開祖である真田信幸らを中心に、幕藩体制下での松代藩を扱った作品集である。実際にもおもしろかったのはタイトルにもなっている「真田騒動」で、ざっといえば前代の悪政をその目で見てきた恩田木工(もく)が推挙によって藩政を預かる身となり、そこに生きがいを見出すまでという話である。これは扱うスパンの長さが後々の部分に説得力を与える作りになっていて、この辺も著者の力量であろうか。また、それでいてごてごてした印象のない辺りも(これは著者に限ったことではないが)時代小説を満喫したという感じにさせる内容だと思う。

抄録

144

「あのように、来る日も来る日も、にこやかな笑いを絶やさぬ男というものは、わし(信幸:唯野注)の眼から見れば油断ならぬ男であった……わしはの、市兵衛。血みどろの権謀術数の海を泳ぎ抜いて、しかも生き残った大名じゃからの」

194-195

留守居役というのは、定府(じょうふ、代々江戸藩邸へ勤める者)の侍が世襲で勤める外交官であり、絶えず他の藩や幕府の情報をあつめたり、出入りの商人たちや諸侯同士の交際、江戸城大奥への出入り等に関係していて、家老よりは席次は下でも、機密費が充分につかえるし、暮し向きはかなりゆたかなものである。

199

それが人間というものなのである。享楽に夢中な(真田:唯野注)信安の寵愛をいっそう強く自分にむすびつけるためもあったろうが、ついには、権力の座についた者の、権力という意識以外には何者もむすびつけて考えることのできなくなった男に、原(八郎五郎:唯野注)はなってしまったのだ。

270

日本全国の中央政府である徳川幕府は全国で四百万石余の土地を領しているのだが、これは価格にすぎず、実質はその土地によって石高通りにならぬところが多く、およそ百三、四十万石程度の経常収入しかない。幕府はこれをもって京都の朝廷を奉養し、全国に散在する天領を維持し、江戸における経費を賄わなくてはならない。もともと家康の莫大な遺金を財政の源泉にしてきたようなところもあるだけに、幕府の威光や政務がひろがって、煩雑になればなるだけ出費が嵩(かさ)んできている。

ほとんど米穀が経済の原動力なので凶作ならば米穀が欠乏し、豊作ならば米価が下落して貨幣の収入が減少することになるのは幕府にも大名にも同じ悩みになってきていているのだ。

286

全文を読まれる場合はログインしてください


Up