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戦略的思考の技術
ゲーム理論を実践する

書誌

author梶井厚志
publisher中公新書
year2002
price760+tax
isbn4-12-101658-0

目次

1感想
2抄録
3204.

履歴

editor唯野
?.11.14読了
2017.5.1公開

経済学で用いられているゲーム理論を素人にも分かりやすく説明するとともに、それを保険やオークションといった現実の具体的な場面に即して解説した本。確かに難しい数式などは登場せず、取り上げられる例も普段の生活に近いものが扱われているので非常に分かりやすい。企業が謳う華麗な宣伝文句も戦略的思考に基いて裏読みすると、そこには消費者の心理を取り込むためのいろいろな仕掛けやパラドックスのあることが見えてくる。

本書が本当に優れているのは、ゲーム理論を詳しく知るというよりは、ゲーム理論的に世の中を眺めてみるとどう見えるかということに主眼が置かれているため、結果として本書で取り上げられている以外のことにも応用させやすい点にある。商売に限らず物事には相手というものが付いて回り、そういう他人を利他的(もちろん相手から見れば自分も利己的)に捉えることには抵抗のある方もおられるかもしれないが、一方でそういうふうに割り切って考えたほうが分かりやすいのも事実である。

難しい説明は単行本の専門書に任せるとして、個人的にはいかにも新書らしい新書という点で好感が持てた。

抄録

i

本書で展開される戦略的な考え方を論理的に、数学的に記述したものが、「ゲーム理論」である。ゲーム理論が経済学で重要な役割を果たしているのは、経済問題を理解するために、戦略的な思考法が欠かせないことと、ゲーム理論が戦略的な考え方と行動方法を論理的に記述するすぐれた道具であるからである。ゲーム理論を用いた経済分析手法は、いまや経済学の専門家にとって不可欠のツールになっている。本書は数式を使わないゲーム理論への入門書でもある。

4

このように、自分のとる行動だけでなく、他のさまざまな人の行動と思惑がお互いの利害を決める環境を戦略的環境と呼ぶ。すなわち、自分にとっての利害が、単に自分がどうするかだけではなく、他の人がどうするかに依存して決まる環境が戦略的環境である。また、自分が戦略的環境のもとに生活していることを認識して、合理的に行動すべく意思決定することが、戦略的思考法である。戦略的分析とは、社会経済現象を戦略的環境における戦略的思考にもとづく意思決定の結果としてとらえ、分析していく手法を指す。

7-8

戦略的環境での意思決定を考える道具が「ゲーム理論(game theory)」である。映画「ビューティフル・マインド」(2001年)のヒットで、ゲーム理論の名が一般に広い範囲で聞かれるようになったのは喜ばしいことである。ゲーム理論は、1920年代にフォン・ノイマン(Johann Ludwig von Neumann 1903~57)によってその基礎の重要な部分が創られ、「ビューティフル・マインド」のモデルになったナッシュ(John F. Nash Jr. 1928~)をはじめとする何人かの研究者により行われた1940年代から1950年代にかけての研究により、その骨格と方向性が定まった。-/-

8-9

戦略的環境において、自分が自分の自由意思のもとにとりうる行動を、その将来にわたり予定を含めて記述したものを戦略(strategy)という。戦略を把握することなしに、戦略的思考は語れない。戦略とは、もともとは戦争での策略を指す言葉であったはずだが、われわれの関心のある戦略的環境での戦略の意味ははるかに広く、意思決定をする主体の利害にかかわるどのような行動も戦略としてとらえられる。

11

戦略の分類の方針が定まっていても、それにしたがって自分にできることを明らかにするというのは、単純な作業に見えてそうではない。自分のとりうる戦略を正確に把握することは思ったよりもむずかしい。しかし、とりうる戦略のリストを意識することなしには、戦略的思考を開始することはできない。不完全にしろ、自分のとりうる戦略には何があるのかを考える姿勢が大切である。

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