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地を這う虫

書誌

author高村薫
publisher文春文庫
year1999
price448+tax
isbn16-761601-7

目次

1感想

履歴

editor唯野
2000.6.21読了
2000.6.25公開
2002.11.28修正

いずれも元警察官が主人公となる短編 4 つを集めた作品集。高村薫という人は文庫化に当って大いに筆を入れ直す人らしく、本作に限らず、ほとんどの文庫化作品で増補や再構成が行われている。そういう手数を踏むか踏まないかは、もちろん作家の裁量であり、恐らくは作家によって結構違いがあるのだろうなと思う。私は文庫で初めて作品に接しているので、元の単行本との違いについては分からない。しかし、作家にとって、ひとたび世に問うた作品を書き換えるという行為は、なかなか勇気のいることなのではないか...という気がする。殊に一定の評価を受けてしまった作品であればなおさらだ。しかし、そういうことを当り前のようにやってしまう著者の場合はどういう気持ちで作品にメスを入れるのだろう、と私は思った。

それはともかく、作品はどれも人情っぽいというか、そういう意味での滋味のあるもので統一されている。(cf. 58, 106, 113, 155-157, 196)考えてみれば高村作品は全般的にいって何らかの影のある男を主人公にする傾向があり、それが作風にとって大きな要素のひとつとなっている。つまりは「何かを喪失し、その先に何かを求める」という構図が読み取れるのであり、この本も例外ではないからだ。

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