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東芝 粉飾の原点
内部告発が暴いた闇

書誌

author小笠原 啓
publisher日経BP社
year2016
price1600+tax
isbn978-4-8222-3661-8

目次

1感想
2抄録

履歴

editor唯野
2020.01.29読了
2020.02.11公開

著者たちが暴いた米原子力会社ウエスチングハウスの業績不振(2015年11月)を皮切りとして、東芝の会計不正の経緯を発端(2015年5月)からヘルスケア部門売却や会計監査法人の変更(2016年1月)頃まで追った本。とはいえ、この本を紐解くまでもなく、会計不正を含めた全ての遠因は東芝による巨額すぎたウエスチングハウス(WH)の買収にたどり着く。

しかし本書の顛末にもある通り、あれだけの部門売却やリストラを行ってなおウエスチングハウスを手放さなさなかったのが、私には異様に映る。常識的に考えればウエスチングハウスこそが疫病神というべきだからだ。しかも、そこまでしたのに2017年にはWHが経営破綻し、その損失を埋めるために虎の子であった半導体部門まで売却したのは皮肉というほかない。ということは逆にいえば、原子力というものにはそれだけ甘い蜜があり、名門企業をそこまで骨抜きにさせる魔性があったということになる。そして、それはつまるところ、この国の原子力ムラを含めた利権の数々、国策と称した原子力の輸出政策につながるのだろう。

奇しくも、つい先日(2020/1/18)には子会社による巨額の架空取引が報じられ、不正会計さえ出尽くしたわけではなかったことを露呈した。東芝の会計不正問題は明らかに「粉飾決算」である。それを同社が選出し報酬を出す第三者委員会が使った「不適切会計」という言葉で済ませるのは詭弁であるし、そもそもそういうものは「第三者」ではない。

それゆえに、本書の副題ともなっている「内部告発が暴いた闇」という言葉は重い。良識ある内部告発者の声があって初めて明らかにされた無理な売上目標への「チャレンジ」と、それとのつじつま合わせのための「会計不正」とのつながりが明確に示されている。そして、内部告発に対する「犯人探し」やそれを気にする告発者の事情などにも触れている。この問題に限らないが真相解明において、この種の声に頼らざるを得ないということも大きな問題を提起している。

というのも極めて興味深いこととして、問題の隠蔽・発覚後の第三者委員会の内実というのが、東電の福島第一原発事故、関電の原発立地の助役をめぐる収賄事件でも、同じ構造になっているからだ。(それらの第三者委員会について調べるとよく分かる。)その結果、この国の原子力に共通するキーワードが「隠蔽」になってしまっている。ということは、そこが根本的に直らない限り、この種の問題は何の解決にもならない。やましいところがないのであれば、全てを公開すれば済む話だ。それができないということは、相応の問題なりリスクがあると考えざるを得ず、そんなくらいであれば「脱原発」した方がよいということになる。

東日本大震災による原発神話の崩壊がなければ、東芝の歴史はまた違っていたのかもしれない。しかし、事故は現実に起きたし、そのリスクがゼロになったわけでもない。かなり以前に広瀬隆がいったように、本当に原発が安全なのであれば原発を電力消費地に近い都市部に作るべきだ。送電コストだって節約できる。そして重大事故が起こり得ないというのであれば電力会社が無制限・無期限の賠償責任を負えばよい。また電力会社の経営者や推進派の方々が連帯保証人になればよい。だって安全なんだから。

抄録

15-16

(2015年:唯野注)11月12日午後3時。株式市場が閉じたタイミングでウェブサイト「日経ビジネスオンライン」に雑誌に先駆けて記事を掲載すると、大きな驚きをもって迎えられた。それまで〝秘密〟とされていたウエスチングハウスの業績不振が初めて明らかになったからだ。

東芝は2006年、約6000億円を投じてウエスチングハウスを買収した。買収当時の社長の西田厚聰(あつとし)や後任社長の佐々木則夫は、2015年度までに30基以上の原発新設を受注し、原子力事業の売上高を1兆円規模に伸ばすと公言していた。だが2011年の福島第1原子力発電所の事故以降、日本はもちろん、世界中で原子力ビジネスは冷え込んだ。

にもかかわらず東芝は、決算会見やアナリスト説明会でウエスチングハウスの経営環境について疑念を指摘されても、頑として不調を認めてこなかった。仮に不調を認めると、東芝の連結決算で巨額の減損処理を迫られる恐れがあったからだ。-/-

17-18

-/-この不正会計が2015年4月に発覚して以降、同社を巡る環境は悪化の一途をたどってきた。

5月に第三者委員会が設置されて本格的な調査が始まった。6月の定時株主総会を経て7月には当時社長の田中久雄を含め、西田と佐々木の歴代3社長が不正会計の責任を取って辞任した。8月に室町正志を軸とする新経営陣が固まるも、決算発表を2度延期するという失態を演じてしまう。不正会計による利益のかさ上げ総額は7年間で2306億円に達し、多くの有価証券報告書を訂正した。-/-

結果、9月に東京証券取引所から「特設注意市場銘柄」に指定された。-/-

20 cf.105

冷静に考えれば、東芝がやってきたことは「粉飾」だ。-/-

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