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吉原御免状

書誌

author隆慶一郎
publisher新潮文庫
year1989
price552+tax
isbn10-117411-3

目次

1感想

履歴

editor唯野
2001.11.18読了
2001.11.18公開
2002.7.14修正

久しぶりに歴史小説を読んだ。著者の直木賞受賞作であり作品も著名なので多くの言葉は要しないだろう。物語は宮本武蔵に育てられた松永誠一郎が江戸・吉原に来たところから始まり、そこへ裏柳生(義仙、宗冬)との神君御免状をめぐる争いに巻き込まれるという筋書きである。しかし、多分に伝奇的要素も強く家康の影武者(二郎三郎、天海)や八百比丘尼、更には吉原でのおいらん(高尾、勝山)との恋物語、吉原という町の解説など多彩な要素がちりばめられた作品になっている。

しかしながら、本書を貫く最も中心的な存在といえば、道々の輩(ともがら)と呼ばれる室町・戦国期の自由人たちの意思であり、公界に住まう住人たち(傀儡子、山伏、御陽師、勧進聖、楽人、猿楽師、遊女、巫女 etc..)を意識した吉原の成立過程にある。それが誠一郎の出自の秘密、吉原の公界としての性格、裏柳生と傀儡子(幻斎、四郎左衛門、野村玄意、山田屋三之丞、並木屋源左衛門、おしゃぶ)とのつながりなどに絡み合いながら進行していく。このような全体的なスケールの大きさも特徴のひとつである。

とはいえ、一方では多少大味かな...という印象もあった。家康の影武者に関してなどは後に『影武者徳川家康』として別作品に結実しているわけで、そういう意味では物語の各要素が多過ぎ、逆に個々の魅力を十分に引き出しきれていないのではないか??という感じがしたためである。しかし、長編を一気に読ませてしまう魅力などは十分に堪能させてもらったので、また機会を選んで別の本を読んでみたいと思う。

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